副鼻腔炎に対する手術成績

2008年鼻科学会発表内容

当クリニックで副鼻腔炎に対する1泊2日の短期入院手術をはじめて丸3年が過ぎました。以前にホームページ上でも宣言しましたように、行った手術に対して責任を持つという意味からも手術成績を公開したいと思います。今回、お示しする成績は2008年の鼻科学会でも発表した内容(当クリニックにおける副鼻腔炎に対するone day surgeryの検討)ですが、その趣旨としてはどの程度病気がよくなったかというのは勿論ですが、安全性を検討するのも大きな目的でした。すなわち、術中、術後の合併症の率や、術後の経過が思わしくなく、退院が延期となった方がおられるかなどです。といいますのも手術を考えられる方の中には、個人病院で、しかも1泊の短期入院ということに対して不安を感じられる方がおられるからです。もっとも、大病院では複数の医師が在籍しており、他科の先生もいますし、いろいろな設備も整っていますから、そう感じられるのも無理はないと思います。では、個人病院で行うのは危険なのでしょうか? そのような観点から術後の経過を検討してみました。

今回、検討対象としたのは、おくだクリニックで全身麻酔下の副鼻腔炎手術を行った298例です。軽度の副鼻腔炎は当院では局所麻酔下の日帰り手術で行うので中等症以上の患者さんが対象です。手術前後のスケジュールとしては、手術対象患者さんは1ヶ月前におくだクリニックにて術前検査を行い、約1週間前に当院にて手術説明を行います。手術当日の朝、当クリニックを受診し簡単な局所、全身のチェックを行った後、午前10時~11時におくだクリニックに入院します。午後1時頃から手術開始し3時頃に手術終了後1泊入院、翌朝退院となり、その足で当クリニックを受診し術後処置を行った後帰宅となります。

結果として298例全員が手術翌日退院となり、入院を延期した方はおられませんでした。まず、手術成績を示します。術後3ヶ月以上経過し創部が安定した方の中でアンケートにお答えいただいた69例に対して手術前後での自覚症状を検討いたしました。

自覚症状の変化(図1)

症状の消失と著明改善を有効例といたしますと、鼻閉では94%、鼻汁では75%、後鼻漏では78%でした。いずれも良好な有効率ですが、特に鼻閉の94%は突出した成績と考えます。また頭痛、頬部痛では76%の有効率でしたが、嗅覚障害では有効率58%と各症状の中ではもっとも成績が悪く不変例も20%に認められました。嗅覚障害は副鼻腔炎の症状の中でも、もっとも治りにくい症状と言われておりますが、その理由として長年の副鼻腔炎の罹患により臭いを感じる神経そのものが機能を失うことが知られております。今回の嗅覚障害の不変例も、その大半が術前の検査で嗅神経の機能が大きく損なわれておりました。

また、総合的な満足度を反映すると考えられる生活の支障度では有効率93%であり、ほとんどの方が日常生活上で支障のない程度まで副鼻腔炎が改善された事を示しております。次にクリニカルパスによる入院中の経過から手術の安全性を示します。


手術の安全性:熱型(図2)

まず熱型ですが術直後はいったん下がった体温は当日晩に平均37度1分まで上昇しますが退院時には平均36度6分と微熱程度まで下がります。このうち当日晩に38度を超えた症例が5例あり、いずれも両側性の高度副鼻腔炎症例でしたが退院時には全例37度台に下がっており特に発熱が退院の妨げとなった症例はありませんでした。


手術の安全性:出血と疼痛(図3)

また、出血、疼痛はその程度によって1から4の4段階に分けて観察するとやはり術当日の晩にピークがありますが退院時にはそれぞれ平均1.5と1.4、のほぼ問題ないレベルまで下がっており出血、疼痛に関しても退院の妨げとなった症例はありませんでした。
以上の結果から、退院時にはほぼ全身状態は安定していることが分かります。

合併症について

最後に術中、術後の合併症を示します。術直後では内眼角の皮下出血が2例、術後1ヶ月に鼻中隔粘膜および中甲介蜂巣断端からの遅発性出血を認めた物がそれぞれ1例、術後2週目に細菌感染の疑いにて入院加療を要した症例が1例でした。これらの合併症の内眼角の皮下出血以外の3例は一定期間経過後に起こったものであり、術中合併症により退院延期となった症例は認めず、短期入院に起因すると思われる合併症も認めませんでした。

また、皮下出血例は眼球運動や視力に異常は認めず1週間ほどで自然に消失しております。遅発性出血例はタンポン挿入により容易に止血しておりますが、中甲介蜂巣断端からの出血例は同時に感冒性の激しい嘔吐、下痢を伴っていたため入院観察が必要と判断し、近医で3日間の入院加療を行いました。細菌感染の疑い例は術後2週目に高熱と筋肉痛が出現、膿性鼻汁を認めたため他院に入院を依頼し抗生剤の加療を行いました。

一般的には合併症を高度障害と軽度障害に分類すると、前者は脳脊髄液漏・頭蓋内損傷・視力障害・眼筋損傷・輸血を要する大出血などがあり、後者としては内眼角出血、眼窩周囲気腫、眼窩内侵入、小出血などが含まれます。発生頻度では高度副損傷は0~2.7%で、軽度副損傷は5.0~15.1%とされています。
当院での合併症率は全症例298例中5例の1.7%であり、いずれも軽度副損傷でした。この率は他家の報告と比較しても低いものであり、総合病院と比較しても十分に安全性の高い手術が行えていると自負しております。勿論、さらなる安全性の向上を目指して細心の注意を怠らないように心がける所存ですし、何かが起こったときのバックアップ体制は重要ですので当院では近隣の総合病院や大学病院と連携を密にして緊急時にはお願いできるようにしております。今後も随時、手術成績を公開してまいります。


副鼻腔炎に対する内視鏡下副鼻腔手術(ESS)の短期入院手術成績

これは平成14年~15年に私が行った副鼻腔炎に対する短期入院手術の成績です。副鼻腔炎は症状が安定するまで術後数ヶ月を要するため、術後1年以上経過し、CTにて術前後に評価し得た30例を対象としました。一般的に手術成績の評価方法としては患者さんの自覚症状がどの程度良くなったかをアンケートで評価し(図1・表1)、客観的にはCTなどで各副鼻腔の改善度を検討します(図2・表2)。

A: 自覚症状の変化(図1・表1)

自覚症状の変化では症状がなくなったものを「消失」、すごく良くなったものを「著明」として両者を合わせたものを有効率としました。(まあまあ良くなったものを「改善」として3者を合わせた改善率で評価する方法もありますが厳しめの基準を採用しました。改善率・有効率の結果は表1を参照してください。)結果を症状別に見ると鼻閉(鼻づまり)が90%、頭痛が97%、嗅覚障害が81%と良好な成績でした。一方、鼻汁や後鼻漏はそれぞれ66%・76%とやや低めの有効率でした。その原因としては30例中の7例が喘息(アスピリン喘息含む)合併例、9例がアレルギー性鼻炎合併例であり5割以上に好酸球性炎症の関与が存在したことが一因と考えられます。


「特殊な副鼻腔炎」で説明したように好酸球性副鼻腔炎は難治性、易再発性ですが、それでも術後1年で66~76%の有効率は決して悪い成績ではないと思います。この図で注目していただきたいのは生活支障度です。近年よくQOL(quality of life)と表現されますが患者さんの苦痛度が端的に反映される項目であり、これが90%と高率であったことは1~2泊の短期入院手術でも十分に根治性の高い手術が行えることを示しています。以前に1週間の入院で行っていた頃の成績と比較しても遜色のない結果でした。


B:他覚所見の変化(図2・表2)

手術成績を客観的に評価するにはCT上の粘膜病変の変化を手術の前後で比較します。すなわち、手術前の各副鼻腔の病変を正常の「0」から高度病変の「3」まで4段階に分類し、術後に病変が消失したものを「消失」、2段階良くなったものを「著明」として両者を合わせたものを有効率としました。
(1段階良くなったものを「改善」として3者を合わせた改善率で評価する方法もありますが厳しめの基準を採用しました。改善率・有効率の結果は表2を参照してください。)


患者さんの満足度

手術を受けられた患者さんにはアンケートの最後に満足度を答えていただいています。これは、単に手術の効果のみではなく、手術前後の治療・医師の説明・看護などを総括したものですが、今回ご協力いただいた30名の平均は96%でした。


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