音響外傷とはどんな病気? 原因・症状・治療方法を解説します。

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
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音響外傷とは、非常に大きい音を聞いた、大音量で音を聴き続けたという場合に発症する難聴の一種です。騒音性難聴やヘッドホン難聴・バンド難聴という別名もあります。猟銃の発射音や爆竹の爆発音を聴いて一瞬で症状が出ることもありますし、徐々に聴力が低下していくこともあるでしょう。完全に聴こえなくなることはないので、症状が進まない限り気がつかない方もいます。また、年代に関係なく発症するのも特徴です。

そこで、今回は音響外傷の原因や症状・治療方法をご紹介します。

  1. 音響外傷に関する基礎知識
  2. 音響外傷のセルフチェック
  3. 音響外傷の治療方法
  4. 音響外傷を予防する方法
  5. 音響外傷に関するよくある質問

この記事を読めば、音響外傷にならないための予防方法も分かるでしょう。騒がしい場所に行くことが多い方や、ヘッドホンをつけて音楽を聴いたりりゲームを行ったりすることが多い方は、ぜひこの記事を読んでみてくださいね。


1.音響外傷に関する基礎知識

はじめに、音響外傷が発症する原因や発症した後の症状などをご紹介します。どのような音を聴いた時に発症するのでしょうか?

1-1.音響外傷とは?

音響外傷とは、大きな音を聴いた時に内耳の中の蝸牛という部位にある「有毛細胞」がダメージを受け、音が聴こえにくくなる症状です。有毛細胞は音を感じ取る細胞で、通常は綺麗に並んで見えます。しかし、大きな音でダメージを受けた有毛細胞は爆風になぎ倒されたような状態になるのです。

飛行機の滑空音や爆竹の破裂音を聴いた・ロックバンドのコンサートなどを聴いた後、耳がキーンと痛んで音が聴こえにくくなったことがある方もいるでしょう。これは、有毛細胞がダメージを受けた証拠です。時間が経てば元に戻る一過性の場合もありますが、翌日も耳鳴りがしたり音が聴こえづらかったりした場合は、耳鼻咽喉科を受診して治療を受ける必要があります。

1-2.音響外傷の原因

音響外傷は、大きな音をいきなり聴いた場合や、耳の近くで音を聴き続けた場合に起こります。たとえば、大きな音がする工場などで長年働いていると、耳が聴こえにくくなることは珍しくありません。また、射撃をする人は耳にヘッドホンをつけていますが、これも音響外傷を予防するためです。

その一方で、大きな音でなくとも音響外傷を発症する例があります。ヘッドホンで音楽を聴き続けると耳が悪くなる、という話を聴いたことがありませんか? 実はこれも音響外傷の一種です。ヘッドホンの音は決して大きくありませんが、内耳の近くで聴き続けるため、長時間続ければ有毛細胞はダメージを受けます。また、電車の中などで音楽を聴いている場合、電車の音にかき消されないように音量を上げることもあるでしょう。こうなると、有毛細胞はますますダメージを受けます。

1-3.音響外傷になるとどうなるのか?

音響外傷になると、耳鳴りや耳がつまった感じがすることがあります。また、すべての音が聴こえにくくなるのではなく、高音域や低音域など特定の音が聴こえづらくなりやすいでしょう。

ただし、耳鳴りや耳がつまった感じは、大きな音を聞いた直後に発症する音響外傷以外は起こらないことも多いのです。特に、ヘッドホンやイヤホン由来の音響外傷は、無自覚なままということも珍しくありません。

1-4.音響外傷の弊害

音響外傷は、年齢や性別を問わずに発生します。今は、小さい子どもでもイヤホンを使って携帯型のゲームを外出先で楽しむことも多いでしょう。また、電車やバスなどでの移動中に親がスマートフォンなどで動画を見せて大人しくさせておくこともあります。

小さな子どもが音響外傷を発症しても、気がつかないというケースは多いのです。音響外傷で耳が聴こえなくなることはありませんが、特定の音が聴こえづらくなるだけで生活はしにくくなります。就けない職業も出てくるでしょう。

2.音響外傷のセルフチェック

  • 空港の側に住んでいたり職場で大きな音を聴き続けたりしている
  • ライブハウスやクラブによく行く
  • 飲酒した後で踊ることがある
  • イヤホンやヘッドホンをして音楽を聴いたりゲームをしている
  • 最近、特定の音域の音が聴こえづらくなった
  • 話し声が大きいと指摘されることが増えた

このような場合は、音響外傷の可能性があります。早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

3.音響外傷の治療方法

この項では、音響外傷の治療方法をご紹介します。何科を受診すればよいのでしょうか?

3-1.音響外傷かな、と思ったら

音響外傷かな、と思ったら耳鼻咽喉科を受診しましょう。耳の聴こえ具合は聴力検査をすればすぐに分かります。子どもの場合は、呼びかけても振り返らないことが多くなったという場合や、大音量でテレビを見るようになった、という場合に受診してください。音響外傷でなくても中耳炎などを発症している場合があります。

3-2.音響外傷の治療方法

音響外傷の治療方法は、ステロイド剤を服薬するのが一般的です。一定期間服用を続ければ、ある程度聴力は回復します。ただし、有毛細胞の破壊が進み過ぎていると、回復にも限りがあるでしょう。ですから、音響外傷は早めの治療が大切です。大きな音を聞いた後、耳鳴りが治まらない場合は、すぐに受診してください。

3-3.ヘッドホン・イヤホンは使用禁止

音響外傷であると判明した時点で、ヘッドホンやイヤホンを使用するのはやめましょう。また、大きな音が長時間出る場所にいかなくてはいけない場合は、耳栓をして耳を大きな音から守ってください。

ヘッドホンやイヤホン由来の音響外傷ならば、それらの使用を中止するだけである程度症状の改善も見られるでしょう。

3-4.定期的な聴覚検査を行う

音響外傷の治療は、時間がかかります。ステロイドの服用が終わった後も、定期的に聴覚検査を受けましょう。聴覚検査を受ければ、どの音域が聴こえにくいかも分かります。子どもの場合は回復も早いでしょう。

4.音響外傷を予防する方法

この項では、音響外傷を予防する方法をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

4-1.飲酒をして頭を激しく動かさない

ロックバンドのコンサートに行くと、体を激しく動かして音楽に乗ることもあるでしょう。しかし、頭を振りながら大音量を聴き続けることは、耳にとってよくありません。因果関係はまだはっきり分かっていませんが、飲酒をして大音量の音楽を聴き続けると、音響外傷を発症しやすくなります。ロックバンドのコンサートに行く前は飲酒をせず、音楽に乗りたい場合は音響設備から離れた場所で行いましょう。クラブで踊る場合も同様です。

4-2.耳栓をして仕事をする

職場で大きな音を聴き続けなければならない場合は、耳栓を使用しましょう。耳栓をしても確実に音響外傷を予防できるわけではありませんが、一定の効果は期待できます。ただし、車の運転だけは耳栓をして行ってはいけません。

4-3.イヤホンやヘッドホンは連続して聴き続けない

イヤホンやヘッドホンをして音楽を聴いたりゲームをしたりする場合は、1時間を区切りとしましょう。また、音量を絞って聴いてください。ゲームの場合はヘッドホンをつけてやるより、無音でのプレイに慣れた方がよいですね。

また、飛行機や電車の中でヘッドホンやイヤホンを使う場合は、休憩時間を長めにとりましょう。

5.音響外傷に関するよくある質問

Q.服薬以外の治療方法はないのでしょうか?
A.現在のところはありません。

Q.クラシックのコンサートでは音響外傷は起こらないものでしょうか?
A.シンバルやティンパニーなどの打楽器の音を間近で聴いた場合は発症する可能性はあります。しかし、そのようなことはめったにないでしょう。

Q.花火の音では音響外傷にはなりませんか?
A.花火を見る場所は、打ち上げる場所よりも離れていますので大丈夫です。

Q.赤ちゃんの場合は、テレビの音でも音響外傷になるものでしょうか?
A.大音量で長時間聴き続けなければ問題ありません。

Q.職場で発せられる音が原因で音響外傷になった場合は、労災が適用されますか?
A.はい、適用されますので、衛生管理者や産業医に相談をしましょう。

6.おわりに

いかがでしたか? 今回は、音響外傷の原因や症状・治療方法などをご紹介しました。スマートフォンや携帯型ゲーム機など、いつでもどこでも楽しめるコンテンツが増えたことで、音響外傷の患者さんも増えてきています。特に子どもは、有毛細胞が傷つく速度も速いので、注意しましょう。海外旅行中のフライト時間の間、ゲームをイヤホンで楽しんでいただけで発症した例もあります。子どもの場合は、30分イヤホンをつけて音を聴いたら、30分休ませるくらいでちょうどよいでしょう。大人でも、注意が必要です。おかしいなと思ったら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。