記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
ドクターズ・ファイル取材記事
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最近、人の声・周りの音が聞こえづらいことはないでしょうか。音を拾いづらいのは、聴覚が衰えが原因です。聴覚の衰えは、加齢が原因となります。
しかし、あきらめないでください。聴覚は回復することもあります。
この記事では、聴覚の回復方法についてまとめました。
目次
- 聴覚は年齢と共に衰える
- イヤホンの多用は難聴の元
- 増えている「突発性難聴」
- 聴覚の回復方法
- 聴覚の衰えを未然に防ぐために
- まとめ
1.聴覚は年齢と共に衰える
1-1.聴覚は老化が表れやすい
人の感覚器官において聴覚は、老化が発症しやすい場所です。
耳は50歳を境にどんどん衰えます。早い人は、40代から耳の老化が始まるので注意しましょう。
聴覚の衰えとして代表的なのは、高い音が聞き取れないこと。聴覚検査で高い周波数が聞き取れないと難聴と判断します。
1-2.「老人性難聴」とは
50代以上の人に多いのが「老人性難聴」と呼ばれる病気です。老人性難聴の人は、高周波数の音域を聞き取ることが難しくなります。
「老人性」となっていますが40代で発生する人も多いです。また、生活環境によっては30代後半から発症する人もいます。
1-3.難聴の原因とは
聴覚が衰えるのは老化現象のひとつです。年齢を重ねることで耳内にある伝達細胞が減少すると言われています。また、最大の原因は騒音です。
耳内には、有毛細胞と呼ばれる細胞があります。この細胞にとって大きな音は毒です。そのため、大きな音を聞き続けると難聴になるのも早くなります。
1-4.脳の活動も関係している
聴覚機能が正常に機能するためには、信号を受け取る大脳がしっかりしていることも重要です。そのため、脳内血管がつまっていると音も拾えません。
血管が老化すると体全体に悪影響を与えます。生活習慣などを見直すことで聴覚の回復につながるのを知っておきましょう。
2.ヘッドホンの多用は難聴の元
2-1.若者に増えている難聴
最近では、スマホや携帯音楽プレーヤーで簡単に音楽が聞けます。屋外でもイヤホン・ヘッドホンで迷惑を掛けず音楽を持ち出すのは気持ちいいもの。しかし、ヘッドホンなどで長時間聴くと耳に負担が掛かります。
世界保健機関では、スマホなどの音楽鑑賞を1日1時間までに控える必要があると発表しました。スマホによる長時間の鑑賞は、難聴に影響すると判断したからです。また、難聴は基本的に回復しないものだと注意しています
2-2.普段から気を付けること
イヤホン・ヘッドホンを使うと無意識に音量が大きくなるのも。そのため、スマホで音楽鑑賞するときは、音の大きさに注意しましょう。年齢を重ねていても同じです。音の大きさには常に意識を払いましょう。
また、大きな音がする場所には近づかないことを意識します。大きな音は、耳内の細胞を破壊するのを知っておきましょう。
2-3.「耳鳴り」はサイン
急に耳鳴りがしたことはないでしょうか。耳鳴りは耳内の細胞が損傷しているサイン。
特に、うるさいところから静かなところに行ったときに「シーン」という音がしたら注意しましょう。
3.増えている「突発性難聴」
3-1.突発性難聴とは
最近になって「突発性難聴」という病気が増えています。
突発性難聴は、朝起きたら耳が突然聞こえなくなる病気です。また、難聴になった原因がはっきりしない場合も「突発性難聴」と診断されます。
突発性難聴は、治療が難しく1か月遅れると完治しないと言われている病気です。今では50代男性だけでなく30代男性など若い人にも増えています。
3-2.ストレスや生活習慣が大きな原因かも
突発性難聴が難病として扱われるのは、原因がはっきりしていないのが理由のひとつ。現在のところでは、ウイルス感染が最も大きな原因とされています。
しかし、患者の中には強いストレスを感じている人も多いです。また、生活習慣が乱れている人にも多い病気となっています。
3-3.普段から気を付ける
聴覚を維持するために大事なのは、普段からの健康管理です。聴覚はいちど衰えると回復が難しい感覚のひとつ。そのため、耳鳴りや聴覚の衰えを感じたときは生活習慣を見直しましょう。
4.聴覚の回復方法
聴覚を回復するのは難しいです。しかし、回復への手段はあります。この項目でしっかりとチェックしておきましょう。
4-1.補聴器を使う
聴覚が衰えたときに使うのが補聴器です。
聴覚はいちど落ちると回復が難しい病気のひとつ。そのため、補聴器で聴覚を助けるのが一般的です。
最近では、補聴器の機能も上がっています。どうしても聞き取りづらい場合は補聴器の導入を検討しましょう。
4-2.薬を使う
難聴に対して薬による治療が注目されています。
聴覚が衰えるのは、耳の中にある有毛細胞の損傷です。その有毛細胞は、体内で再生できません。そこで、薬によって有毛細胞を再生する薬が使われています。
また、最近増えている突発性難聴に対してはステロイド剤が有効。副作用などの問題を乗り越えるのが課題となっています。
5.聴覚の衰えを未然に防ぐために
聴覚はいちど衰え始めると治療が難しいです。そのため、普段から気を付けておきたいことがあります。その内容をチェックしておきましょう。
5-1.ストレス発散をする
現代人に避けて通れないストレス。ストレスは少ないほうがもちろんいいです。しかし、まったく感じない生活はほぼ不可能と思いましょう。
ストレスを無くすのではなくて発散する方法を見つけます。自分の趣味・運動でいいです。また、誰かと会って楽しい時間を過ごすのもストレス発散の方法となります。自分にとって楽しい時間を見つけましょう。
5-2.生活習慣を見直す
耳鳴りを多く感じるときは自分の生活習慣を見直すことをおすすめ。
- 遅くまで起きている。
- 偏食になっている。
- 仕事ばかり続いている。
健康にマイナス要素の多い生活だと耳に負担が掛かってしまいます。耳だけでなく体のことを踏まえて生活習慣を見直しましょう。
5-3.大きな音がする環境を避ける
酒場やライブ、カラオケなど音が大きな場所が好きな人は注意です。音が大きい環境では耳の有毛細胞が損傷します。そのため、長時間いることはおすすめしません。
5-4.血管年齢にも気を配る
血管に年齢があるのを知っているでしょうか。血管年齢が実年齢より衰えていると難聴となる可能性が高まります。また、耳だけでなくさまざまな健康被害が出てくるのです。
耳とまったく関係なく思える血管年齢。しかし、血管がつまりやすいと音の信号がスムーズに伝わりません。
血管年齢に気を配ると体全体の健康にも気を配ることができます。しっかりと血管年齢もチェックしておきましょう。
6.まとめ
いかがでしたか?
この記事では聴覚とその回復方法についてまとめました。最後に、聴覚にかんする大事な情報をチェックしておきましょう。
- 聴覚は年齢と共に低下する。
- 多くの場合は50代から低下する。
- 生活環境によっては若い人も難聴となる。
- 大きな音を聞く環境だと難聴となる可能性が高い。
- 聴覚の回復は難しい。
- 普段の生活で気を使っておく。
聴覚は音を拾う大事な感覚。少しでも長く使えるように普段からの生活に気を配りましょう。また、難聴となった場合も薬などの治療ができます。最後まであきらめないように!
監修者
川村 繁樹
医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック 院長
医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医
耳鼻咽喉科専門医として10年間にわたり大学付属病院の部長を経験し、平成16年に川村耳鼻咽喉科クリニックを開業。親切で丁寧な診察・手術に定評があり、毎月300名以上の新患が来院。
- 花粉症やアレルギー性鼻炎に対する凝固手術(局所麻酔下・日帰り):約1~2ヶ月
- 鼻中隔弯曲症と中等以下副鼻腔炎に対する手術(局所麻酔下・日帰り):約10ヶ月
- 鼻閉に対する鼻中隔弯曲症と下甲介の手術(局所麻酔下・日帰り):約半年
- 重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術(局所麻酔下・日帰り):約半年
- 重症副鼻腔炎に対する手術(全身麻酔・一泊):約5ヶ月
の手術待ち状況となっている。
アレルギー性鼻炎に対する最も効果の高い手術として認識されている『超音波凝固装置による後鼻神経切断術』や、副鼻腔炎に対する新しい術式である『前方からのアプローチによる内視鏡下鼻内手術』を考案し、平成23年の日本鼻科学会『好酸球性副鼻腔炎の診断と評価作成基準の試み』では全国から選ばれた5人の内、唯一開業医として参加。現在も毎年250件以上の手術を行っており、継続的にその成績を学会や論文で報告している。
ドクターズ・ファイル取材記事
論文・著書、シンポジウム・講演・海外発表の実績