流行性耳下腺炎(おたふく風邪)は合併症が怖い?その理由を徹底解説

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
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可能な限り信頼できる情報をもとに作成しておりますが、あくまでも私見ですのでご了承ください。内容に誤りがあった場合でも、当ブログの閲覧により生じたあらゆる損害・損失に対する責任は一切負いません。体調に異変を感じた際には、当ブログの情報のみで自己判断せず、必ず医療機関を受診してください。

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流行性耳下腺炎とは、おたふく風邪の正式な病名のことです。ムンプスウィルスが原因で発症することから、ムンプスとも呼ばれています。12歳以下の子どもに発症しやすい病気で、時折学校や幼稚園などで大流行することもあるでしょう。発症してもほとんどが軽症ですみますが、思春期以降に発症した場合は深刻な合併症が出ることもあります。

そこで、今回は流行性耳下腺炎(おたふく風邪)の治療法や予防方法、注意すべき合併症などをご紹介しましょう。

  1. 流行性耳下腺炎の基礎知識
  2. 流行性耳下腺炎とよく似た病気
  3. 流行性耳下腺炎の注意点
  4. 流行性耳下腺炎に関するよくある質問

この記事を読めば、おたふく風邪に関する知識はばっちりです。小さな子どもがいる方やまだおたふく風邪にかかったことがなく、予防接種を考えているという方も、ぜひ読んでみてくださいね。


1.流行性耳下腺炎の基礎知識

初めに、流行性耳下腺炎とはどのような病気かということをご紹介します。子どもの頃に感染したという方は多いと思いますが、注意しなければならない合併症もあるのです。

1-1.流行性耳下腺炎とは

流行性耳下腺炎は、ムンプスウィルスに感染することによって発症する感染症です。紀元前5世紀には古代ギリシアの医学者であるヒポクラテスが残した記録にもあるほど、古くから存在が確認されています。
流行性耳下腺炎は、発症した人やウィルスを保菌している人の咳やくしゃみによってウィルスが飛散し、空気と共に気道に吸い込まれることによって感染する病気です。潜伏期間は約18日間で、発症すると耳の下にある耳下腺という部分や顎下腺(がっかせん)という部分が、腫れて痛みます。重症化すると睾丸(こうがん)や精巣(せいそう)・卵巣(らんそう)などが腫れて痛むこともあるでしょう。耳下腺が腫れるとまるでおたふくのような輪郭になることから、日本では「おたふく風邪」という通称の方が有名です。

子どもが耳の下の腫れや痛みを訴えた場合、子どもの機嫌がよくても耳の下が腫れている場合、大人でも耳の下が腫れた場合は、至急小児科・耳鼻咽喉科を受診しましょう。

1-2.流行性耳下腺炎の特徴

流行性耳下腺炎は、主に2歳~12歳までの子どもが発症しやすい病気です。子どもの頃に発症した経験のある方も多いことでしょう。定期的に春から夏にかけて大流行することがあり、2016年にも大きな流行がありました。症状はほとんどが軽症で治まり、1週間~2週間あれば全快します。ただし、発症者の1割が合併症として無菌性髄膜炎を発症し、1,000人に1人の割合でムンプス難聴が合併症として現れ、聴力に影響が出ることもあるでしょう。流行性耳下腺炎の合併症というと、精巣炎や卵巣炎が有名ですが、こちらは思春期以降に発症した場合に合併症として発症するケースが多く、不妊の原因になることはまれです。それよりも、先にご紹介した髄膜炎や難聴を起こす合併症の方に気を付けましょう。

なお、流行性耳下腺炎を発症した場合は、症状が現れてから5日間以上が経ち、体調が良好にならなければ学校に行くことはできません。これは、学校教育法に定められている出席停止という措置です。出席停止期間中は欠席扱いになりません。感染を拡大させないためにも必ず守りましょう。

1-3.治療方法や予防方法など

流行性耳下腺炎の治療方法は、基本的に対症療法が取られます。熱が高い場合は解熱剤を用いて熱を下げ、脱水症状には輸液で対処をするのが一般的です。髄膜炎が合併症として現れた場合は、安静にして症状の回復を待ちます。
なお、流行性耳下腺炎の治療は小児科や耳鼻咽喉科で診断と治療が行われるので、耳下腺炎かなと思ったら、どちらかを受診しましょう。

現在では、流行性耳下腺炎のワクチンも有料で受けることができます。小さい頃から保育園に通う人や、10歳までに流行性耳下腺炎に感染しなかった場合は摂取した方がよいでしょう。摂取をすれば、罹患率を1~3%まで低下させることができます。接種費用は2回で5千円前後が相場です。自治体によっては子どもが接種する場合は補助が出ることもあります。

1-4.感染しても発症しない場合もある

流行性耳下腺炎の原因であるムンプスウィルスに感染しても、約3割の方が発症せずに終わります。ですから、学校でおたふく風邪が流行したのに1人だけ発症しなかったという場合は、不顕性感染(ふけんせいかんせん)の可能性もあるでしょう。

2.流行性耳下腺炎とよく似た病気

耳下腺炎は、コクサッキーウィルス・パラインフルエンザウィルスなどが原因でも発症します。この場合は、耳下腺炎を何度も繰り返すこともあるでしょう。そのため、反復性耳下腺炎とも呼ばれているのです。子どもが耳の痛みや腫れを訴えた場合は、流行性耳下腺炎の可能性がとても高いのですが、思春期以降の年代の方が耳の下の痛みを訴えた場合、反復性耳下腺炎の可能性もあります。とはいえ、耳下腺炎の区別は素人ではつきません。熱が出ていても出ていなくても、耳の下あたりが痛んだり腫れたりした場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。

3.流行性耳下腺炎の注意点

この項では、流行性耳下腺炎に発症した場合の注意点などをご紹介します。ぜひ参考にしてくださいね。

3-1.大人が感染した場合は要注意

会社で流行性耳下腺炎が流行するようなことはめったにありませんが、家族に発症者が出た場合などは、大人の未感染者は十分な注意が必要です。
大人は子どもよりも免疫力が高いため、症状が重症化しやすいでしょう。合併症が発症する場合も、髄膜炎から脳炎に移行したり膵炎を発症したりします。精巣炎・卵巣炎も重くなりがちです。
家族に流行性耳下腺炎患者がおり、耳の下が腫れたり痛みだしたりした場合は、至急耳鼻咽喉科を受診してください。また、膵炎になると激しい腹痛が起こります。この場合は内科を受診しましょう。精巣炎・卵巣炎の場合は泌尿器科や婦人科です。休日や夜間の場合は救急外来を受診して構いません。
流行性耳下腺炎を発症しないまま大人になり子どもができたという方は、ワクチン接種がおすすめです。

3-2.軽症でも外出は控える

流行性耳下腺炎は、軽症の場合はほとんど熱も出ません。そのため、子どもは、外に遊びに行きたがることもあるでしょう。しかし、症状は軽くても、体内ではウィルスが増殖しており、咳などに混じってあたりへ飛散します。ですから、外出は必要最低限にしましょう。

3-3.最も怖い合併症、ムンプス難聴

流行性耳下腺炎の合併症の中で最も心配なのが、ムンプス難聴です。発症も1,000人に1人の割合と高めになっています。小さい子どもが難聴になっても、親に耳が聞こえづらいことを伝えられないことが多く、難聴が見逃されてしまうことも珍しくありません。ムンプス難聴の怖さは、流行性耳下腺炎の症状の重い・軽いに関係なくいきなり発症することです。
症状が軽くてすんだと喜んでいたら、難聴になってしまったという例もあります。
また、ムンプス難聴に有効な治療方法はありません。ステロイドの投与で症状が改善する可能性もありますが、効果がないことも多いでしょう。ムンプス難聴になると、片耳が全く聞こえなくなってしまうこともあります。
ですから、子どもが流行性耳下腺炎を発症した場合は、念のために耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査を受けましょう。そうすれば、聞こえの状態が分かります。

なお、ムンプス難聴は大人でも発症するので、大人も症状が改善したら聴力検査を受けてください。現在のところ、流行性耳下腺炎を発症した後で、ムンプス難聴の発症を予防する方法はありません。

4.流行性耳下腺炎に関するよくある質問

Q.生まれたばかりの新生児は、感染しないのですか?
A.そんなことはありません。近くに発症者がいれば感染します。兄弟が感染した場合は、赤ちゃんを隔離しましょう。

Q.不顕性感染を確かめることは可能ですか?
A.可能ですが、時間とお金がかかります。心配ならばワクチンを接種しましょう。

Q.ワクチンは副作用が心配です。
A.副作用よりも合併症の方がよほど恐ろしいので、できる限りワクチンは受けましょう。

Q.流行性耳下腺炎を発症した場合、会社でも出社停止になりますか?
A.インフルエンザと同じように出社停止を命じる企業が多いようです。

Q.膵炎と卵巣炎の区別はつくのでしょうか?
A.素人ではとても難しいので、まずは内科の診療を受けましょう。卵巣炎ならば、判明した時点で婦人科へ連絡してくれます。

5.おわりに

いかがでしたか? 今回は流行性耳下腺炎の症状や合併症についてご紹介しました。流行性耳下腺炎自体はそれほど恐ろしい病気ではありません。しかし、合併症を発症すると最悪の場合は死に至ります。大人が発症すると自分が流行性耳下腺炎であると気がつきにくい方も多いと思いますが、耳の下が痛い・腫れるなどの症状がある場合は、耳鼻咽喉科を受診してください。