嗅覚が加齢とともに衰えてくるって本当? その原因は?

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
ドクターズ・ファイル取材記事
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年を取ると視覚や聴覚といった体の機能が衰えていきます。しかし、嗅覚も衰えることはあまり知られていません。では、嗅覚は何歳くらいから衰え始めるのでしょうか?

そこで、今回は嗅覚が衰え始める年齢や、原因をご紹介します。嗅覚が衰えるとどのような問題が起こるのでしょうか? また、嗅覚を鍛(きた)える方法もご紹介します。

最近、ものの匂いがよく分からなくなったという人や嗅覚を鍛(きた)えたいという方は、ぜひこの記事を読んで参考にしてくださいね。

  1. 嗅覚はなぜ衰えるの?
  2. 嗅覚の衰えると起こる不具合とは?
  3. 喫煙や強い匂いは嗅覚が衰える原因になる?
  4. 嗅覚を鍛(きた)えることはできるの?
  5. おわりに

1.嗅覚はなぜ衰えるの?

視覚や聴覚と異なり、嗅覚はなかなか衰えているのに気がつかない人も多いと思います。この項では、嗅覚が衰える原因や衰え始める年齢をご説明しましょう。

1-1.嗅覚が衰える理由とは?

ものの匂いは、鼻腔(びくう)の奥にある嗅上皮(きゅうじょうひ)についている嗅覚受容神経(きゅうかくじゅようしんけい)で感じ取ります。この神経は、視神経などとは異なり外界に露出しているのです。ですから、ウィルスなど外部の有害な物質の攻撃も受けやすいでしょう。風邪をひくと鼻がつまって匂いが分からなくなるのは、このためです。

しかし、嗅覚受容神経(きゅうかくじゅようしんけい)は生涯にわたって再生をくりかえします。視覚や聴覚の神経が一度壊れると二度と再生しないのとは対照的ですね。

この神経が再生するプロセスはとても複雑。ですから、加齢とともに再生が不完全の細胞が増えていきます。不完全な細胞では匂いを感じ取れません。これが、年とともに嗅覚が衰える理由です。

1-2.嗅覚は何歳くらいから衰えるの?

嗅覚の衰えには個人差があります。しかし、視覚や聴覚に比べると衰え始めるのは遅く、70代になってから嗅覚が鈍くなる人が多いようです。80代になると、匂いを感じる能力は大幅に落ちるでしょう。でも、よほどの高齢にならない限り嗅覚が完全に失われることはありません。しかし、日常生活ではさまざまな不具合が出てくることも多いのです。

2.嗅覚の衰えると起こる不具合とは?

では、嗅覚が衰えると起こりやすい不具合にはどのようなものがあるのでしょうか? この項では、その代表的なものをご紹介します。

2-1.腐敗に気づかない

ものが腐ると独特の匂いがします。ですから、口に入れなくても匂いをかいで「これは腐っている」と判断することができるでしょう。しかし、嗅覚が衰えていると腐敗臭(ふはいしゅう)に気づきません。

また、視力も衰えていれば食べ物が糸を引いていたとしても気づきにくいでしょう。ですから、腐敗した食べ物を食べてしまう危険があります。特に、ひとり暮らしの高齢者や老夫婦だけで暮らしている場合は注意が必要でしょう。

2-2.危険な匂いに気づかない

家庭で使われている都市ガスやプロパンガスには、ガス漏(も)れに気づきやすいようにわざと悪臭がついています。「玉ねぎの腐ったような匂い」ですね。しかし、嗅覚が衰えていると、この匂いにも気づきにくくなります。

また、火災が発生すると焦げくさい匂いや、ものが焼ける独特の匂いがするでしょう。これも、高齢者ほど気づきにくいのです。ですから、危険を察知できずに逃げ遅れてしまうケースも少なくありません。

2-3.味が分からなくなる

味覚は、五感の中で最も衰えにくい感覚といわれています。しかし、「風味」という言葉があるように、嗅覚が衰えると味も感じにくくなる場合が多いです。

風邪をひいていると、ものの味が分からなくなる人もいるでしょう。あれと同じです。ですから、食欲がなくなって栄養不足なってしまう高齢者もいます。

3.喫煙や強い匂いは嗅覚が衰える原因になる?

視覚や聴覚に比べると嗅覚は衰え始めるのが遅いでしょう。しかし、タバコを吸っていると嗅覚が鈍りやすいのです。それは、タバコの煙に含まれる成分が嗅覚受容神経(きゅうかくじゅようしんけい)を鈍らせてしまうからといわれています。

タバコの煙は非喫煙者には悪臭と感じますが、喫煙者は何も感じない人が多いのも嗅覚が鈍っているせいなのですね。また、最近は香りの強い柔軟剤の人気が高まっています。中には香水と同じくらい強い香りのものもあるでしょう。

いくら良い香りでも、強過ぎる人工の匂いは嗅覚を鈍らせます。「そういえば、慣れてきたのかあまり柔軟剤の匂いを感じなくなってきた」という人は要注意。嗅覚が衰えているかもしれません。

また、部屋や車の消臭剤にも同じように匂いの強いものがあります。それらを使う場合は、規定量を守りましょう。「よい香りだから」といって大量に使えば、それだけ嗅覚が鈍りやすくなるかもしれません。

4.嗅覚を鍛(きた)えることはできるの?

嗅覚の衰えを完全に止めることはできません。しかし、意識して嗅覚を鍛(きた)えることで、嗅覚を鋭くすることは可能です。最後に、嗅覚を鍛(きた)える方法をご紹介します。

4-1.日常で感じる匂いを意識してかぐ

私たちの生活している場所では、いろいろな匂いがあふれています。普段は「何かの匂いがするな」と思っても、それが何の匂いであるかまでは意識しない人がほとんどでしょう。

そこで、日常で感じる匂いを意識してかぎ分けるようにしてみてください。何の匂いかまで、突き止める必要はありません。「以前かいだことのある匂いだな」「これはまるで、バラの香りのようだ」と記憶と照らし合わせるくらいで十分です。意識して匂いをかいでいくうちに、嗅覚も鋭くなっていくでしょう。

4-2.スニフ・セラピーを試してみる

これは、アメリカで開発された嗅覚の衰えを予防する方法。好きな匂いを3~4種類用意して、1日に4~6回その匂いをかいで嗅覚を活性化さるというセラピーです。このとき、ニンニクや玉ねぎのような刺激臭は避けてください。コーヒーや花の香りといった柔らかいものがおすすめです。

好きな匂いをかぐことにより、嗅覚が活性化して衰えを予防できるでしょう。「嗅覚を活性化しなければ」と義務感でかぐのではなく、楽しみながらかぐのがコツです。好きな香りやよい香りはリラックス効果も高いので、仕事の合間にかいでもよいでしょう。

ただし、匂い同士が混じりあうと悪臭に近くなるものもありますから注意が必要です。また、強い匂いのするものは部屋の中でかぎましょう。レストランなど飲食店には持ちこんではいけません。

5.おわりに

いかがでしたか? 今回は、嗅覚が衰える原因や予防法などをご紹介しました。
まとめると

  • 嗅覚は70代から衰え始める。
  • 嗅覚が衰えると味覚も鈍くなったり、危険な匂いに気づきにくくなったりする。
  • 嗅覚はタバコを吸っていたり強い人工的な香りをかぎ過ぎていると早く衰える。

ということです。今の世の中には、いろいろな香りがあふれています。日常的に強い香りをかぎ過ぎていると、早い人では30代から嗅覚が鈍くなってくるといわれているのです。嗅覚は病気などでも鈍くなりますが、鼻がつまっているわけでもないのに匂いがしにくいという人は、嗅覚の衰えを疑ってください。

しかし、まだ30代くらいならば嗅覚の衰えを止めることができるでしょう。タバコを吸っている人は禁煙を心がけてください。また、香りが強い柔軟剤を使っている人は、量を控えたり無香料の柔軟剤に変えたりしてみましょう。しばらくすれば、ふたたび匂いの違いが分かるようになる可能性が高いです。

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

監修者

川村 繁樹
医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック 院長
医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医

耳鼻咽喉科専門医として10年間にわたり大学付属病院の部長を経験し、平成16年に川村耳鼻咽喉科クリニックを開業。親切で丁寧な診察・手術に定評があり、毎月300名以上の新患が来院。

  • 花粉症やアレルギー性鼻炎に対する凝固手術(局所麻酔下・日帰り):約1~2ヶ月
  • 鼻中隔弯曲症と中等以下副鼻腔炎に対する手術(局所麻酔下・日帰り):約10ヶ月
  • 鼻閉に対する鼻中隔弯曲症と下甲介の手術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症副鼻腔炎に対する手術(全身麻酔・一泊):約5ヶ月

の手術待ち状況となっている。

アレルギー性鼻炎に対する最も効果の高い手術として認識されている『超音波凝固装置による後鼻神経切断術』や、副鼻腔炎に対する新しい術式である『前方からのアプローチによる内視鏡下鼻内手術』を考案し、平成23年の日本鼻科学会『好酸球性副鼻腔炎の診断と評価作成基準の試み』では全国から選ばれた5人の内、唯一開業医として参加。現在も毎年250件以上の手術を行っており、継続的にその成績を学会や論文で報告している。

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論文・著書、シンポジウム・講演・海外発表の実績