滲出性中耳炎とはどんな病気? 急性中耳炎との違いは?

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

記事監修
川村耳鼻咽喉科クリニック 院長 川村繁樹
ドクターズ・ファイル取材記事
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中耳炎は子供がかかりやすい病気です。何度も病院にかかる子供も多いでしょう。その中でも特に治療が長引きやすいのが「滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)」です。一般的な中耳炎とどこが違うのでしょうか?

そこで今回は、滲出性中耳炎の症状や治療法をご紹介します。中耳炎は子供の病気というイメージがありますが、滲出性中耳炎の場合は大人もかかることが多いのです。中耳炎を繰り返しやすい子供がいる方や、最近耳の調子がおかしいという方はぜひ読んでみてくださいね。

  1. 滲出性中耳炎とは?
  2. 滲出性中耳炎の治療法は?
  3. 手術を受ける際の注意点は?
  4. おわりに

滲出性中耳炎とは?

この項では、滲出性中耳炎の原因や症状をご紹介します。滲出性中耳炎は痛みがない場合も多く、気付くのが遅れることも多いのです。また、放っておくと難聴になる可能性もある怖い病気なのです。

1-1.滲出性中耳炎とはどんな病気?

滲出性中耳炎とは、鼓膜の後ろ側の部位の「中耳」に液体がたまっている状態のことをいいます。急性中耳炎はこの部位が炎症を起こすので、激しい痛みを感じることが多いのです。しかし、滲出性中耳炎の場合は痛みが出ないことも多く、子供がかかった場合は発見が遅れることもあります。

また、子供の病気というイメージが強い中耳炎ですが、滲出性中耳炎は大人がかかることもあります。「何だか耳が聞こえにくい」と思ったら念のために耳鼻科を受診してみましょう。

1-2.滲出性中耳炎の原因は?

滲出性中耳炎は、急性中耳炎の治療が不完全な場合になりやすい病気です。急性中耳炎にかかったときに途中で「痛みがなくなったから」と治療を中断すると発症しやすいでしょう。また、副鼻腔炎(蓄膿症)やアレルギー性鼻炎、アデノイド増殖症にかかっていると、滲出性中耳炎を繰り返しやすくなります。

1-3.こんな症状に気を付けて

前述しましたが、滲出性中耳炎は急性中耳炎と異なり、痛みを感じにくいです。ですから、子供がかかっても気が付かない親も多いでしょう。子供に

  • テレビの音が大きくなった
  • 大きな声で呼びかけないと呼んでも振り返らなくなった
  • なんとなく機嫌が悪い
  • しょっちゅう耳を触っている

などの症状が現れたら、念のために病院を受診しましょう。また、急性中耳炎になったときは、医師から完治を告げられるまでしっかりと治療しましょう。痛がらなくなったと途中で治療を中断してしまうと、滲出性中耳炎に移行しやすいです。

滲出性中耳炎の治療法は?

では、滲出性中耳炎の治療法にはどのようなものがあるのでしょうか? この項では、それをご紹介していきます。滲出性中耳炎を繰り返す場合は手術を勧められることもあるでしょう。

2-1.投薬や洗浄による治療

内服薬や吸引薬、さらにアレルギーを抑える薬などを服用することによって耳の中にたまっている液体がひくのを待つ治療法です。痛みがほとんどないため、小さい子供にも負担がありません。吸引薬は鼻から霧状の薬を噴霧する方法で、耳鼻科で吸引する必要があります。

また、鼻洗浄をして鼻水を取り除くことも効果的です。どちらにせよ1ヶ月~2ヶ月程度は耳鼻科に通う必要があります。医師が完治を告げるまで通院を続けてください。

2-2.鼓膜切開

  • 中耳にたまった液体の量が多く、難聴がひどい
  • 投薬や洗浄による治療の効果が今ひとつない

という場合は鼓膜を切開して液体を取り除く治療法を勧められます。鼓膜を切開すれば耳が聞こえなくなるのでは?と思うかもしれませんが、メスで切れ目をいれるだけですから、聴力に影響はありません。

また、切った後は数日~1週間でふさがりますので特別な処置も必要ないのです。切開をする際は、事前に麻酔薬を点耳しますので痛みもないでしょう。ただ、耳の中にメスを入れるので切開する際に大きな音を感じることもあります。鼓膜の切開は何度やっても大丈夫ですが、小さい子供の場合は恐怖感を覚えることが多いです。耳鼻科によってはできるだけ投薬で治す治療法をとっているところもありますが、どうしても必要な場合もあるのです。

2-3.手術

滲出性中耳炎を何度も繰り返す場合は、医師から手術をすすめられる場合があります。手術は中耳にたまる液体の排出と耳の換気を目的に小さなチューブをいれるものと、アデノイドという扁桃腺の一種を切除するものがあります。両方をいっぺんに行うことも多いでしょう。

耳にチューブを入れていても、生活に支障は全くありません。聴力にも問題はありませんから、安心してください。ただし、潜水など水に長時間潜る場合は、耳栓が必要になります。ですから、スイミングを習っているお子様の場合は医師とよく相談して手術を受けましょう。

チューブを入れる手術はお子様が小さい場合は1泊入院をし、全身麻酔で行います。小学校高学年程度の年齢からは、部分麻酔で外来で行うこともできるでしょう。アデノイド除去の手術の場合は、全年齢で1泊の入院が必要です。両方をいっぺんに行う場合は、1泊~2泊の入院が必要です。それなりの設備のある病院で手術をするので、個人医院にかかっている場合は、総合病院への転院が必要になるでしょう。

手術を受ける際の注意点は?

子供に手術を受けさせる、もしくは自分が手術を受けるという場合は、以下のことに注意しましょう。

3-1.休養が十分に取れる日程で手術をする

一泊の入院とはいえ、全身麻酔は体に負担がかかります。退院後も2~3日の休養が必要でしょう。できれば木曜日に入院し、金曜日に退院、土日にゆっくり体を休める、というような日程を組んでください。退院したその足で仕事にいったりすると治りが遅くなります。

3-2.夏の手術を避ける

子供の場合は手術をすると2か月程度プールに入れません。ですから、体育の授業がプールになる夏は避けたほうが無難でしょう。ただし、夏休みに手術をするのは構いません。

3-3.親の付き添いも考えておく

病院によっては、小さな子供が入院する際は親の付き添いが必要です。特に未就学児が手術をする場合は、付き添いが必要な場合が多いでしょう。親が仕事をしている場合は、その調整も必要です。

また、小さい子供の場合は容体が急変することもあるので、入院日が多めになることもあります。ですから、親が休みやすい時期に手術をすることも大切です。

3-4.通院が必要

手術が終わっても経過観察のための通院が必要です。ですから、通いやすい病院で手術を受けましょう。

おわりに

いかがでしたでしょうか。今回は滲出性中耳炎の原因や治療法をご紹介しました。
まとめると

  • 滲出性中耳炎は痛みを感じにくい
  • 子供だけでなく大人もかかる場合がある
  • 治療法は投薬や鼓膜切開がある
  • 再発を繰り返す場合は手術が必要

ということです。中耳炎で手術なんて、と思う方もいるかもしれません。しかし滲出性中耳炎を繰り返すと、難聴になる可能性もあるのです。

また、繰り返し鼓膜切開を続けていると患者の負担も大きくなるでしょう。手術をすれば再発が減り、精神的にも安定します。小さい子供の手術はかわいそう、という意見もありますが、全身麻酔で1時間程度の手術ですからすぐに終わります。

また、大人の場合、滲出性中耳炎になっても気が付かない人が多いです。耳が聞こえにくくなったら、年のせいと考えてしまう人もいるでしょう。しかし、急に耳が聞こえなくなったら中耳炎の可能性が高いです。念のため、耳鼻科を受診しましょう。

川村耳鼻咽喉科クリニック院長 川村繁樹

監修者

川村 繁樹
医療法人 川村耳鼻咽喉科クリニック 院長
医学博士
関西医科大学耳鼻咽喉科・頭頚部外科 特任教授
身体障害者福祉法第15条指定医

耳鼻咽喉科専門医として10年間にわたり大学付属病院の部長を経験し、平成16年に川村耳鼻咽喉科クリニックを開業。親切で丁寧な診察・手術に定評があり、毎月300名以上の新患が来院。

  • 花粉症やアレルギー性鼻炎に対する凝固手術(局所麻酔下・日帰り):約1~2ヶ月
  • 鼻中隔弯曲症と中等以下副鼻腔炎に対する手術(局所麻酔下・日帰り):約10ヶ月
  • 鼻閉に対する鼻中隔弯曲症と下甲介の手術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症アレルギー性鼻炎に対する後鼻神経切断術(局所麻酔下・日帰り):約半年
  • 重症副鼻腔炎に対する手術(全身麻酔・一泊):約5ヶ月

の手術待ち状況となっている。

アレルギー性鼻炎に対する最も効果の高い手術として認識されている『超音波凝固装置による後鼻神経切断術』や、副鼻腔炎に対する新しい術式である『前方からのアプローチによる内視鏡下鼻内手術』を考案し、平成23年の日本鼻科学会『好酸球性副鼻腔炎の診断と評価作成基準の試み』では全国から選ばれた5人の内、唯一開業医として参加。現在も毎年250件以上の手術を行っており、継続的にその成績を学会や論文で報告している。

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論文・著書、シンポジウム・講演・海外発表の実績